負け犬の傷に、キス
全体の士気が上がり、敵を倒すペースが速くなった。
2階の拘束係だった下っ端たちも下りてきて、味方が増える。
気づけば、人数でも力量でも、完全にこちら側が勝っていた。
「希勇さんすごいですね」
博くんがユキの背中に声をかけた。
「あれが実力か……。いつか手合わせしてぇな」
「下の方々もそうとうですが、彼らをまとめてるだけあります」
「博は希勇くんの実力を知ってたんだろ?」
「ええ、まあ。ですが……データ以上ですよ」
「最強の同盟、だな」
ふたりがこっそり絶賛していたことなどつゆ知らず、俺は残りわずかとなった薬物使用者たちをやっつけていった。
傷つけすぎず
できるだけ痛くないように
必殺の一撃で。
10分も経たないうちに標的は最後のひとりとなった。
俺は男の顔面をぶん殴り、文字通り鼻を折った。
目をかっ開いたまま失神した男を下っ端がロープで拘束する。
するとドンッ!と壁が揺れた。
えっ、何ごと!?
「ここに売人はいる?」
音のしたほうを見やれば、薫の片足が壁を蹴っていた。
その足のすぐ横には、おびえきった敵が1人。
意識は戻ったものの、縛られてるせいで逃げられないもよう。
男の首がもげそうなくらい左右に振られた。
売人いないんだ……。
たしかに“薬”の売買してる場面はなかった。