負け犬の傷に、キス
とうにぬるくなったアイスティーのそばで、きゅうっと手と手を重ねる。
手のひらを密着させ、指を絡め、強く強く祈る。
こういうとき誰に祈ればいいんだろう。
神さま? 仏さま?
はたまた魔王さま?
どれもぴんとこなくて、なんとなく祈ってるみたいになってしまう。
こんなんじゃ効力なんてないよね。
「夕日さん」
わたしの手に、望空ちゃんが優しく触れた。
「つめ立てちゃダメですよ。手のこうがきずついちゃう」
「あ……」
気づかなかった。
痛みすら感じなかった。
手の甲にはくっきりと爪の跡が4つ。
左右どちらにも残っていた。
強く握りすぎたせいだ。
自覚してやっと微弱な痛みが神経を突いてくる。
非力なわたしはどうしても守られる立場。
だけどね。
『好きな人が怖がってたら守りたいし、頑張ろうとしてたら俺も力になりたい』
希勇くん、わたしもだよ。
立ち向かうときは一緒。
せめて想いだけはそばに。
――ブオオオン!!
窓が振動した。
暗闇一色だったガラスにうすい赤色が透けてる。
今の……
バイクの、音。
誰より先に広間を飛び出していた。