負け犬の傷に、キス
洋館の外に出てみれば、バイクの軍団が道路を埋め尽くしていた。
朝早くからかき鳴らすエンジン音は、はた迷惑なはずなのに、たまらなく涙腺を刺される。
汚れの目立つ白シャツをはためかせ
エンジン音と同じくらいらんまんと歌い
ヘルメットもなしに笑顔をまき散らしてる。
結果は聞かなくてもわかるよ。
遅れて洋館前に来た望空ちゃんたちにも一目りょう然で、ほっと胸を撫でおろしていた。
待機組みんなで手を振る。
「希勇くん!」
「薫さーん! 柏さーん!」
「おーい! みんなー!!」
それに気づいたのか、バイクの速度が上がった。
洋館に到着したバイクの数に内心圧倒される。
一番に降りた希勇くんはふにゃりと微笑んだ。
「ただいま」
赤と黒の浮かぶシャツ。
右頬と左手の甲の生傷。
やっぱり傷ついちゃったんだね。そりゃそうだよね。戦いに行ったんだもん。
でもどことなくすっきりした表情で安心した。
「おかえり……!」
きれいでなくなった白シャツごと抱きしめた。
「お、俺、汗くさいしシャツ汚れてるし……だから……」
「だめ」
「ゆ、夕日ちゃん!?」
離してなんかあげない。
希勇くんが頑張った証を、わたしにも感じさせてよ。