負け犬の傷に、キス


会えるのを待つんじゃなくて

自分から会いに行く。


そっか……そうだよね。


ずっとモヤモヤしてるより行動したほうが絶対にいい。



「そうですね。会いに行ってみます!」



あの男の子が着てた制服……たぶん地元の西校のものだった。

早速、今日の放課後に西校に行ってみよう。




「でもお菓子かぁ……。男の子ってどんなお菓子が好きなんでしょう」


「どうかしらね。好みは人それぞれだから。あ、でも、手作りより既製品のほうが受け取ってもらいやすいと思うわよ」


「な、なるほど! 既製品のお菓子で……男の子にプレゼント……うーん」




今まで男の子にプレゼントしたことがないからさっぱりわからない。

バレンタインも友チョコばっかりだったし。


何をあげたら喜んでくれるかな。




「ケーキだとちょっと重いですよね……」


「そうねぇ。クッキーとかのほうが軽い気持ちで食べやすいかもしれないわね」


「ですよね。じゃあ焼き菓子系にしてみます! 相談に乗ってくれてありがとうございました!」




頑張ってね、と、辻先生の目尻がやわく垂れる。


ゆるんだ口元に添えられた左手の薬指にはキラリと指輪が光っていた。



美人で優しいし、きっとすてきな奥さんなんだろうな。旦那さんもすてきなんだろうな。



そんな憧れの辻先生からアドバイスをもらったことだし

プレゼントと一緒に「ありがとう」って伝えるぞ!


頑張れ、わたし!


えいえいおー!


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