負け犬の傷に、キス
画面に表示された無機質な文字。
携帯がミシリと軋む。
『彼女を返してほしければ、薬物の件から手を引け。
さもなくば……』
待てよ。
待ってくれよ。
何なんだ、これは。
文章の下には写真も付いていた。
両腕を縛られた、意識のない夕日ちゃんの写真が。
ドクン、と脈を打つ。
背中に汗が伝う。
まるで浮かれたテンションに冷水をかけられたよう。
これを送ってきたのは、どこのどいつだ。
「希勇? なんつー顔して……」
「……やばい」
「あ?」
「どうしよう! ゆ、夕日ちゃんが……!!」
柏の肩を掴み、叫び散らす。
あれだけうるさかったホールがしんと静まった。
「キユー!? いきなりどうしたの」
「ちゃんと説明しろ」
柏も俺の肩を掴みかかりなだめる。
だめだよ。無理だよ。
落ち着いていられない。
言葉が出てこないんだ。
取り乱しながら黙って携帯を渡す。
それを見た薫と柏はがく然とした。
すぐに薫は下っ端に話し、柏は博くんに連絡を入れた。
「いたずらにしてはやりすぎだね」
「標的のヤツらか?」
「復讐ってこと? あり得るね」
薫と柏の会話が、耳から脳へと痛々しく流れてくる。