負け犬の傷に、キス
「昨日何があったの」
男の子がクッキーを受け取ると、男の子の隣にいた、ラズベリー色の髪の男の子が首を傾げた。
きれいな人……。
美形だし、背が高いし、スタイルいいし……モデルさんみたい。
「あー、えっと……ちょっと絡まれちゃって」
「まさか“負け犬”って知ってるヤツじゃないでしょうね?」
「……し、知られてました」
笑って乗り切ろうとする男の子に、長身の男の子はキッと目を鋭くさせる。
「知られてる上に堂々と守ったの?」
「う、うん……」
「キユーらしいね」
はあああ、と盛大にため息をついた長身の男の子と目が合った。
冷たい眼差し。
なんだか怖い。
「あんた、バカじゃないの」
「え……」
「こんなところに来たらまた狙われるよ」
「ねらわれ……?」
「昨日絡まれたんならわかるでしょ」
口振りは刺々しいけど
この人はたぶんわたしのために、あえてそっけない言い方をしている。
詳しく言われなくてもわかる。
わかってるよ。
『うわさの“負け犬”』
『双雷最弱の総長っていうあの?』
わたしと男の子たちは、世界がちがうって。