負け犬の傷に、キス



「おとなしく捕まりやがれ!

――“負け犬”!!」




マケイヌ。

それは俺をバカにした、あだ名。



一見平凡な俺、草壁 希勇(クサカベ キユウ)が追われる理由。




俺は負け犬でいいんだ。

だから今はとにかく逃げる!



コンビニ前を通り過ぎ、歩道橋を全速力で駆けあがる。



うっ……階段はやめとけばよかったかも。

けっこうきつい。



ぜえはあ言いながらなんとか上りきり、一直線に走る。


よし、今度は下りだ! 楽勝!




「おい待て!!」

「逃がすかよ!!」




やばっ! ヤンキーたちが追いついてきた!

急がないと!




「――きゃあっ!?」




え?



うしろから甲高い悲鳴がつんざいた。


反射的に振り返れば。

小さな女の子がヤンキーたちに押しのけられ、背中から落下しかけていた。




「あ、危ない……!」




頭より先に体が動いていた。


地から足の離れた女の子に、遅れて俺も地面を蹴った。



恐怖のあまり声すら発せられない女の子に手を伸ばし、抱き寄せる。



空中でくるりと回り、体勢を整え、見事着地!


――グキッ。


……とはいかず。



「いっ……!!」



右の足首が! 今! グキッて!!

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