負け犬の傷に、キス
「はーあ、疲れた~」
「甘いの食って帰ろうぜ」
「僕たちもたまり場におじゃましていいですか?」
「同盟のこと話したいしな」
「お好きにどーぞ」
マンションから出たとたん緊迫感が一瞬にして吹き飛んだ。
俺もやっと解放された気分。
やっぱり平和って最高。
パトカーが来る前にさっさと行こう。
バイクにまたがろうとしたら、夕日ちゃんとつながった手に熱がこもったのを感じた。
「夕日ちゃん?」
「希勇くん」
「なに?」
「わたしを好きになってくれてありがとう」
ずるい。
うす暗くなってきた茜色に照らされた夕日ちゃんがあまりにきれいで、危うく泣きそうになった。
「ど、どど、どうしたの急に」
なんとか平常心を保とうとしてもムダだった。
不整脈なのが俺の全部からつつ抜けだ。
ほら。
だって夕日ちゃん
いたずらっ子みたいに笑ってる。
「えへへ。なんとなく伝えたくなって」
困ったな。
俺の彼女が最高にかわいくてかっこいい。
いや、ほんとは、全然困ってない。
「俺もいつも思ってるよ。俺のそばにいてくれてありがとう。夕日ちゃんといられて幸せだよ」
もちろん今も。
1秒先は、もっと。
あぁ、どうしよう。
「大好き」じゃ足りなくなってきた。