負け犬の傷に、キス
希勇くんの額ににじむ汗をハンカチで拭いてあげる。
何かあったんだろうな。
疲れてない? どこかで休んだほうがいい?
「ち、ちょっと、ヤンキーに追われちゃって……」
「え!?」
「あ! 大丈夫だよ! 撒いてきたから! デートをじゃまされたくないし」
ここ最近は希勇くんが狙われることも少なくなってきたけど、やっぱりまだ絡まれちゃうんだなあ。
双雷の総長だから仕方ないのかもしれないけど……。
「そんな不安がらないで」
頭の上で大きな手のひらが2回はずむ。
「“負け犬”のうわさもいずれ消えるから」
夏休みが始まってから、双雷のうわさといえば同盟のことで持ち切りだ。
突然誕生した、双雷の同盟グループ。
――王雷。
王さまに忠誠を誓う
という由来で名付けられた。
そこには“無色”が属しているらしい。
そう、ユキさんが自分でうわさを広めた。
王雷は洋館の隣にある倉庫をたまり場として使うそうで、現在大掃除中。
昨日手伝ったが、まだもう少し掃除しなきゃいけなさそう。
“無色”のメンバーは王雷の幹部に。
そして、肝心の総長は、
『監視役になってあげるよ』
なんとカオルさんが名乗り出た。
双雷の副総長と王雷の総長を兼任するらしい。