負け犬の傷に、キス
この話題性ばつぐんの王雷のうわさのおかげで、“負け犬”のうわさが消えかかりつつある。
このまま完全に消えてくれたらいい。
そしたら希勇くんの負担が少なくなるでしょ?
本当はね、無茶しすぎないでほしいよ。
今だって。
右腕のケガを隠そうとして。
無理してるの見透かしちゃうよ。
「右腕、見せて」
むっとしながらお願いすると、希勇くんは困り顔になる。
ためらいがちに右腕を見せてくれた。
引っかかれたような生傷。
皮膚がめくれていてすごく痛そう。
ハンカチで軽く血を拭いてから絆創膏をペタリと貼った。
早く治りますように。
絆創膏の上から口づけをする。
ほんの一瞬。
それでも希勇くんは真っ赤で。
かわいくてつい笑みがこぼれた。
「デート、しよ?」
希勇くんの右腕に自分の腕を絡ませる。
もっと赤くなったところも。
今日のためにおしゃれしてきてくれたところも。
愛おしくてたまらない。
「ま、また絡まれても……守るから!」
茶色の瞳が真っ直ぐわたしを射抜く。
吸い込まれてしまいそう。
わざとチークをうすくしてきたのに全然意味なかった。
希勇くん、かっこよすぎるよ。
ねぇ、希勇くん。
わたしにも守らせて。
傷ごと全部、愛したい。
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