負け犬の傷に、キス
草壁くんは年下には見えないな。
気配り上手だし、思いやり精神であふれてる。
こんなすてきな男の子に出会ったことない。
「た……タメ口のほうが……わたしは嬉しい、です」
仲良くなりたい。
今日、この会話が終わったら何もかも終わっちゃうなんて、やだ。
怖い思いをすることになったとしても、草壁くんとまた会えるような関係になりたい。
わたしってこんなにわがままだったっけ。
「俺も……暴走族の総長だからって怖がらないでいてくれたら、嬉しいな」
あ……敬語じゃない。
屈託のない微笑みに、両頬にほのかな熱が帯びていく。
怖くない。
ちっとも怖くないよ。
こんな優しいのに、怖がるはずない。
「あ、連絡先も交換する?」
「う、うん!」
「はい、これ俺の。もしまた危ない目に遭ったら連絡して? すぐ助けに行くから」
肩書きが畏怖するものであろうと
わたしにとってはやっぱり、どうしたって
正義の、ヒーローなんだ。
お互いの連絡先を追加すると、草壁くんは画面に表示された通知に気づいてギョッと焦り出す。
「は!? なんだよこれ!?」
「どうかしたの?」
「あ、いや……! お、俺、そろそろ行かないと」
「もしかして忙しかった? そんなときに引き留めてごめんね」
「ううん、謝らないで。俺が話したかったんだから」
「……あ、ありがとう」
「こちらこそ! じゃ、またね津上さん」
あわただしく去っていく草壁くんに手を振る。
公園を出て角を曲がる手前で振り返って、大きく腕を振り返してくれた。
最後の最後までずるいくらい優しいな。