負け犬の傷に、キス
またね、か。
「また」があるってことだよね。
よかった。次がある。
重みを増した携帯を大事に握り、わたしも公園をあとにする。
「あの、すみません。お尋ねしたいことがあるのですが」
繁華街近くのコンビニ前。
やや高めの声を背後から投げられた。
昨日ナンパされた、同じ場所で。
『こんなところに来たらまた狙われるよ』
ラズベリー色の髪の男の子に注意されたことを思い出し、足がすくんだ。
恐る恐る振り向いてみる。
うしろにいたのは、小柄な男の子だった。
緊張が一気にほどける。
161センチのわたしより身長の低い美少年は、少し大きめのサイズの学ランを着ていた。
中学生……ぽいな。
ライトブラウンのサラサラそうな髪。凛と伸びた背筋。そこはかとなく優等生のような印象を感じる。
「えっと……わたしに、何か……」
「昨日ここで騒ぎがありましたよね?」
「……え、」
断定的な言い方をして、にっこりと笑顔を貼り付ける。
こげ茶色の瞳が、わたしを見透かしているよう。
綺麗なのに……なんでだろう。
委縮してしまう。
「そこであなたを助けた男性について、教えていただけませんか?」