負け犬の傷に、キス
「そもそもどうしてきみがここに?」
女の子に座るよう促しながら、俺も白のソファーに腰かける。
「だって昨日、お姉さんを送ってあの場所に戻ったら、お兄さんいないんですもん! せっかくさがして見つけたのに」
「あ、そういえば俺のこと探してたって……」
昨日はいろいろありすぎた。
ナンパしてた5人を作戦Bで退治したあと、おかしな太眉の男子に急に竹刀で突かれるし、また5人が戻ってくるかもしれなかった。
……うん、とにかく大変だった。
一応路地で身を隠して、少しの間女の子を待ってはいたんだけど。
戻ってこないようだったから、てっきり帰宅したのかと思っちゃったんだよな。
「だから今日こうして、双雷のたまり場に来たんです!」
「聞きたいことはたくさんあるけど……まずは、協力してくれてありがとう。昨日は待ってなくてごめんな?」
ランドセルがないということは、一度家に帰ってからここに来たんだろうな。
わざわざ手土産まで持って。
この、トップの座に近しいと称される
双雷のテリトリーに、恐れもなく。
洋館の場所はわりと知られているけれど、敵対してるヤンキーたちだってまともに近づきやしない。
なのに小学生の女の子が堂々とやって来るとは。
もしかして前代未聞なんじゃないか?