負け犬の傷に、キス
「きみ、名前は?」
「富樫 望空です。小学6年、とくぎは空手。去年まで続けてましたが、大会でゆうしょうしすぎてあきたのでやめました」
「優勝しすぎて、飽きた……。すごいね……」
「それほどでもないです」
空手の大会の優勝常連。
だからって、痩せていたとはいえ成人男性を一蹴できるか?
小学生であの強さ……尋常じゃない。
何回も優勝してるから強いんじゃなく
あれほどの力があるから勝ち続けていた。
……のほうが正しそうだな。
「望空ちゃんは俺を探してたんだよね?」
「はい!」
「どうして? 俺に何か用でもあるの?」
「お兄さん、双雷のそうちょうですよね?」
「え……まあ、うん。そうだけど。よく知ってるね」
「双雷は有名ですから」
へぇ、小学生にまで広まってるんだ……。
嬉しいような、こっぱずかしいような。
「あたし、双雷に入りたいんです!」
「……へ?」
「仲間にしてください!」
なんて威勢よく、なんておっかないことを……!
薫なんかダージリンをふいてるし
柏はゴホッゴホッとむせてる。
このことはまだ二人にも言ってなかったのか……。
そりゃ驚くよな。俺も同じ気持ちだ。
初対面のときのイメージが、さっきから崩れてるよ! 崩れすぎて第一印象があとかたもないよ!