負け犬の傷に、キス


ブレザーがぐっしょりだ。

明日までに乾くだろうか。



ブレザーを脱いでしぼってみる。



おお……雨水が出る、出る。

それなりに吸収していてくれてたらしい。


おかげで中に着てたカーディガンやワイシャツにはそれほど被害はない。



髪と靴は……ダメだな。びしょびしょ。



ふわり、と。

柔らかい感触が頬に触れた。




「!?」


「あ、勝手にごめんね。冷えちゃうと思って」




濡れた顔を津上さんがハンドタオルで拭いてくれたことにびっくりしたけど……



ち、近くない!?



津上さんの手はハンドタオル越しで

顔だってすぐそばにあって


びっくりというより緊張しちゃうよ。



「い、いいよいいよ! 自分で使って!?」



赤面する前に急いで一歩しりぞく。


津上さんも濡れてるし、まずは自分を!

お、俺は丈夫だから!




「もう1枚あるから」


「……そ、そうなの?」


「うん。だからそれは草壁くんたちで使って?」


「あ、ありがとう。助かるよ」




津上さん、ふつうだな……。

どぎまぎしてるのは俺だけみたい。


俺が意識しすぎなだけ?



優しい匂いのするハンドタオルは、軽く水気を拭きとるのにありがたく使わせてもらった。


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