負け犬の傷に、キス
街の自警団と名高い双雷も、しょせん暴走族。
きっと怖いんだろうな、って。
でも全然ちがった。
一生懸命守ってくれた。
笑って救ってくれた。
誰よりも優しい、ヒーローだった。
クラスのみんなにも知ってほしい。わかってほしい。
そんなことないって。
双雷はいい人たちばかりなんだって。
堂々と言い返せる勇気があったら……。
思い切って振り返ってみる。
「……っ」
たくさんの白い目が
じっとわたしを睨んでる。
吐き散らそうとした言葉ごと、ヒュッと飲み込んでしまった。
だめだ。無理だ。
怖い……!
ノートやお弁当の入ったカバンを抱えて教室を飛び出した。
廊下ですれ違う人や先生にもうわさされてる気がして、不安で不安でたまらなかった。
辻先生に相談に乗ってもらいたい。
話を聞いてほしい。
一目散に走って保健室に着いた。
扉に手をかける。
「はい。そうなんです。友だちとケンカしちゃって、学校でもギスギスして……夜も考えすぎて寝付けなくて……」
「そう……。つらいのね」
……先約が、いるみたい。
うっすら聞こえてきた誰かの悩みに、辻先生が優しくなぐさめてる。