負け犬の傷に、キス


突如、携帯が震えた。


え? な、何……!?

あわてて画面を見てみれば。




「く、さかべ、くん……」




先ほどつながらなかった名前が。


どうして……。




『あ、もしもし?』




電話に出ると、少し焦った声音が響いた。




『ごめん、さっき出られなくて』


「今忙しいんじゃ……」


『え? 忙しくはないよ? ただちょっと逃げてたというか、なんというか……』




乱れた呼吸、土を踏む音。

……草壁くんも、学校じゃないの?




「草壁くん、外にいるの?」


『あ、バレた?』


「学校は?」


『サボっちゃった』




電話の奥であははと苦笑してる。


サボったって……草壁くんが!?


なんだか意外だな。

でも不良だもんね。日常茶飯事なのかも。




「く、草壁くんもサボるんだね」


『俺だって本当はサボりたくなかったよ。なんとか平均を保ってる成績が下がるかもしれないだろ?』


「えっ、じゃあどうして……」


『学校にいろいろと押しかけられちゃってさ。迷惑かけたくなくて逃げ出してきたんだよ。おかげで授業は出られないし、お昼は食べそこねるし、追いかけ回されるしで散々だよ』



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