負け犬の傷に、キス


だからサボってるんだ。


逃げたいわたしとは大違い。

草壁くんは逃げたくて逃げてるんじゃない。




「今は大丈夫なの?」


『ああうん、大丈夫……だと思う。追手は来てないし、撒いたかな』


「そっか。よかったね」




大変な思いをして逃げざるを得ない草壁くんに、弱音なんて吐いちゃいけない。




『それより津上さん、どうしたの? 何かあった?』


「う、ううん、なんでもないの。ごめんね急に電話かけちゃって」




このまま電話を切らないと。

自分でなんとかしなきゃ。



あの白い目だって、ナンパしてきた男の人たちと比べたら全然怖くない。


怖く、ないから……大丈夫になりたい、のに。




『本当に?』


「っ、」


『ちょっと涙声だよね? 本当は何かあったから電話してきたんじゃないの?』




あぁ、なんで。

気づいちゃうの。


気づいてくれるの。




『俺のこと、頼ろうとしてくれたんじゃないの?』


「……頼っても、いいの?」


『もちろん! あ、この際、一緒にサボる?』




明るく言って元気づけようとしてくれてる。


事情を何も知らないのに……知らなくても助けてくれるんだね。



相変わらず優しすぎるよ。


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