負け犬の傷に、キス






最寄り駅で電車を降りて、西校のほうへ向かった。


こんなに全力疾走したの久しぶり。

晴れの日の風が涼しくて気持ちいいこと、初めて知った。




ようやっとたどり着いた公園で

無邪気にはしゃぐ子どもたちを


ベンチに座って眺める草壁くんに見惚れた。



ほがらかに澄んだ茶色い瞳が、おもむろにわたしを映す。




「あっ! 津上さん!」




――あぁ……好き。



にこやかに手招きをする草壁くんに駆け寄った。

止まれなかった。


突進するみたいに抱きつけば、草壁くんの心音がドックンと飛び跳ねた。




「つつつつ津上さんん!?」


「……っ、会えた……」




もう苦しくない。

息もできる。


草壁くんのそばが、一番心から落ち着ける。



大好き。




「つ、津上さん……?」



――ぎゅるるるぅ~。



「……っ!?!?」




や、やってしまった!!
いろいろと!!


ハッとして身を離す。


思わずハグしちゃったし、お腹鳴っちゃったし!

は、恥ずかしい……!!


うぅ……ど、どう言い訳しよう……。



上のほうに熱がたまっていく。


両手を広げて顔を隠したら、クスリと笑われた。




「津上さん」


「……あ、あの、ご、ごめ」


「お昼にしよっか」



< 73 / 325 >

この作品をシェア

pagetop