負け犬の傷に、キス
●感情
「また“無色”が出たんだって~」
昼休みの開口一番。
日差しの強い中庭に、ベコッと大きな音を立つ。
あ、しまった。
200mlの牛乳パックがへこんだ。
「“無色”って……あんまり情報のないグループ、だっけ?」
「あんまりっていうか、なーんにもわかってないとこ」
「その“無色”が出たってことは……またどこかの族がつぶされたの?」
「さあ? どうなんだろうね。出たってのもうわさだし。……でも、誰かしら殺られてそうだよね」
のんきだな、薫は。
中庭でパンを食べてるこの状況もたいがいのんきだけど。
「なんで情報が何もないんだろ……」
「“無色”と会ったヤツらが全員殺られてるからじゃない?」
軽く言うなよ!
ぞっとするだろ!
「“無色”……怖いなぁ……」
「“無色”もだけど、ポニーテールと中坊のことも忘れないでよ?」
「わ、わかってるよ!」
情報が少なくて怪しい人物が多すぎて困る。
竹刀を持った長髪男子はやっぱり西校にはいなかったし。
みんなどこに隠れてるんだ。隠れるのうますぎ。
「そういえば昨日どっかの雑魚に追われてたみたいだけど、逃げてるときにそれっぽい人とか見かけなかったの?」