負け犬の傷に、キス



「用事あるなら今日はたまり場に来れない?」


「ううん、抜け出して日暮れくらいに行く」


「抜け出す!? ……それでいいのか跡取りよ」


「いーのいーの。楽してなんぼでしょ? この髪色もピアスもグチグチ言われるけど、無視してれば何の支障もないしね。でもまさか暴走族までやってるなんて知られたら、ものすごいことになるんだろうな。笑える~」




ちっとも笑えない。

そんなことになったら俺にまで被害がおよびそう……。


頼むから平和に過ごしてくれ。




「よくバレないよな。柏に関しては薫の管轄(カンカツ)にしたってさあ」


「器用に生きてるものでね」


「見習いたい……」




薫は含み笑いをしながら一輪のアサガオを手に取った。


一番色が鮮やかな花びら。
きれいに張った葉と茎。


さっきは面倒がってたくせして、なっとくのいった花を見つけられて満足してる。




「キユーも何か買ってけば?」


「え?」


「告白のときに渡せば好感度上がりそう」


「な、なるほど!」


「ほら、あの赤いバラとかどう?」


「ば、バラ? キザすぎない?」


「それくらいがいいんだよ。ん~……本数は3か9か12あたりかな」



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