負け犬の傷に、キス
……あっ、バラ3本の意味聞き忘れた。
あとで調べてみよう。
カバンにバラをしまう。花の部分がはみ出てしまったが、仕方ないか。
「さてと、たまり場に行くか」
今日、柏は早帰りって言ってた。
もうたまり場にいんのかな。
西へ歩いていると、なんだか妙に視線を感じる。
敵意、ではない。
むしろ温かい感じの……。
信号待ちをしながら、目だけを動かして見渡してみる。
周りの視線は俺のカバンに集まっていた。
「ねぇ、見て」
「わあ! きれい……」
「カノジョさんへのプレゼントかな」
「キザなことするな、あの坊主」
「かわい~」
こ、このバラのせいか!!
ふつうに歩いてたけど……そうだよな、男子高生がバラ持ってたら注目するよな。なんですぐ気づかなかった俺!!
うわああ! 恥ずかしい! こそばゆい!
信号はよ変われ!
青になった瞬間、早歩きで横断した。
このスピードで繁華街も突っ切ろう。そうしよう。
にぎわう大通りにさしかかる手前で
「あっ」
見覚えのあるうしろ姿を発見した。
淡いクリーム色の制服。
ふたつに結われた赤茶色の髪。
もしかしなくても……。