負け犬の傷に、キス


俺の声が聞こえたのか、そのうしろ姿が振り向く。




「あ、草壁くん」




やっぱり津上さんだ。

俺に気づいて駆け寄り、にっこりスマイル。



好きって自覚したから

ひとつひとつの仕草にドキドキしちゃうな。



目を合わせて話すこともまともにできなくなって、左へ右へ泳がせてしまう。


……ん?




「右の頬、少し赤いけど大丈夫?」




昨日は赤くなかったはず。

何かあったのだろうか。


今度はダークブラウンの瞳が泳ぎ出す。




「うん、大丈夫。もう痛くないから」




右頬を隠すように触れ、ふにゃりと笑う。


本当に大丈夫なのかな?

心配で背中を丸めれば、津上さんの視線が俺の顔の奥にずれる。




「……それよりも、そのバラどうしたの?」




ぎゃっ! しまった!
津上さんに気づかれてしまった!




「こっ、これは……その……」


「?」




なんて言うべき!? ごまかせる!?


口ごもる俺に、津上さんはこてんと首を傾げる。



……だめだ。ごまかせないよ。


どうせきれいに咲いてる間に告白しなきゃいけないんだったら、明日明後日じゃなくて、今、一番きれいな状態で伝えたほうがいいんじゃないか?


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