ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
椿は店の裏口に向かい、携帯電話を手にした。
ついさっきの着信は切れている。

「最近、たばこ少ないっすね」
凌駕の言葉に海は手元に集中しながら答える。

「凌駕に言われたからな」
「え?」
海は海に行った日に凌駕に言われた言葉を考えていた。

もう香菜はどこにもいない。その幻を探して空を見ることを、生きることをあきらめている自分の象徴のような気がして、現実を認めるためにも、自分自身に言い聞かせるためにも、海はやめようとしていた。

「どうしたんですかね。椿ちゃん。」
「あー。」
凌駕が裏口で電話をする椿の方を見る。
海もちらりとそのほうを見た。

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