ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
そして、手にしていた本のページをめくろうとした。
海がすかさず手を貸す。

「これ・・・」
めくったページに載っているブーケを見て椿が左手で指をさした。
「ん?」
凌駕が椿を気遣いながら近づく。
「これが・・・いいと思います・・・」
消えてしまいそうな、風の音で消されてしまいそうな声でそうつぶやく椿。

「これ?」
凌駕が驚いた表情から見る見るうちに笑顔に変わる。
「さすが椿ちゃん!俺のいちおし!」
本当に凌駕が本にした見本の中でも一番時間をかけて試行錯誤して作ったものだった。

いきいきとした表情で凌駕がそのブーケについての説明を椿にする。
椿は真剣に凌駕の話を聞いたあと、聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやいた。

「・・・いいな・・・」と。
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