【BL】近くて遠い、遠くて近い。





体育祭当日。




ナオくんからあのメールをもらって以降、
オレは気が気じゃなく
その後の学校生活も悲惨なものだった。


常に手汗かくし。
やばい妄想してしまうし。

なんかわからんけど



下半身も若干反応してまうし。



もちろん、恥ずかしいようなことはしてない。
するつもりもない。



自分でなんか気持ちが悪いし。
申し訳ないし。



友達やるにしても、
あくまで健全な仲でいたい。



オレ自身が、頭の中でナオくんを
変な目で見ていることが許せへん。
恋人でもないのに。



綺麗な想像だけをしていたい。



それやのに、
抑えられない少しの期待が先走って
やっぱり気が気やあらへん。



そんなオレの状況など関係なく、
運動場の隅いっぱいに
全校生徒の父兄が陣取り、

昼花火の大きな爆発音とともに
体育祭が始まった。



オレにとって今日という一日は、
ナオくんの姿を探して
かっこいいシーンをたくさん見ることができるボーナスタイムだ。



プログラムは予定通り順調に行われ、
次の種目は騎馬戦。



予行練習の時に知ったが、
背が高くガタイの良いナオくんは
赤ブロック1年の大将として担がれていた。



相手にはもちろん、オレが所属している
青ブロックもいる。



敵ブロックなのに、
ナオくんを応援してしまっている自分がいる。



クラスが離れているから
ブロックが違うのは必然的やったけど、
でも頑張ってる姿を見れるからそれで幸せ。



騎馬戦は上半身裸で行われるから、
それもまた目に毒。



6月に入って強くなった紫外線に
すっかり焼けている肉付きの良い体は
オレの視線を奪って離さなかった。




今日、このあと、行くん?

家に?

彼の家に?

いや、まずいやろ。

何が起こるか分からんのに。

いやいや、それこそナイナイ。





と、ぼんやり見ていると、

静寂とざわめきが混じり
緊迫した空気が場内に広がった。




赤ブロック1年と青ブロック1年の
大将同士で一騎打ちになってしまったようだ。



思わずオレは息を飲んだ。




頑張れ、ナオくん。

頑張れ、ナオくん。

頑張れ、ナオくん。



心の中で懸命に祈った。

真剣な表情で敵を睨むナオくんの横顔は、
迫力があってとてもカッコ良い。

同じ1年女子たちも、
初めて見るクラスメイトたちの雄々しい姿に
目を輝かせて黄色い声援を送っている。



ナオくんは大きな体を揺らし、
相手の大将とバシンッという音を立てて取っ組み合い
その迫力に父兄や生徒から響めきが上がった。



オレのクラスメイトである
相手の大将に嫉妬してしまうほど
激しくもつれ合う体。



太い腕をさらに膨らませて
力一杯相手を押し倒すナオくんの姿を
しっかり目に焼き付けては密かに祈る。



最終的に、大将の二人は
周りに支え役として群がっている教師たちの中に崩れ落ちた。



激しい戦いを繰り広げた彼らに向けて、
歓声と拍手が鳴り響く。




ようやく立ち上がった二人の大将。

ふと、ナオくんがこちらを見た気がした。




オレの目がおかしくなければ、

ナオくんは少し笑って

オレの方をじっと見ていた。





…誰かを、見てるんかな。
まさかオレやないやろうし。
家族がオレの後ろにおるんかな。

それとも、彼女、とか。





結果発表を待つ静かな場内、
放送部員がハキハキとした声で
マイクに向かって話し始めた。






《赤ブロックも青ブロックも、
1年生とは思えない激しい決闘でした。

大将同士の一騎打ちは、ものすごい迫力でしたね。

勝負の判定はーーーーー









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