【BL】近くて遠い、遠くて近い。
通学路の別れ道。
「ほんなら勉強頑張ってなー!」
「いやお前も頑張れや!」
適当に笑けながら山下から離れ、
一人狭い路地に入る。
この路地はとても長く、一本道。
左右は古い住宅街。
この路地に入れば、
さっきまで騒がしかった通学路も一気に静かになる。
こっち方面の校区には、同じ学校の生徒があまりいない。
だからこそ、見つけやすい。
50メートルくらい先にいる、同じ制服を着た生徒。
見つけた。
間に合った。
あんなに遠かったから
さっき見つけれんかったんや。
オレは、こうして
ここ最近
毎日のように一人の生徒の後ろ姿を眺めながら下校している。
はじめて、この路地でその姿を見たときは
こっちの校区でよかったと心底思った。
50メートル。
今日は少し出るのが遅くなってしもうたから、
やっぱちょっと遠い。
遠いけど、
背丈、歩き方、髪型、後ろ姿全てが好きで、
服のシワまで全部見えるくらい
めっちゃ近くで見てるような感覚。
この路地で、その後ろ姿を眺める数分間。
あの人はHR終わったらすぐに学校を出るから、
同じタイミングで出ないと間に合わない。
それでも、やっぱり眺めていたいから
オレも毎日寄り道をせず
学校を終えたらすぐに下校する。
この狭い路地の突き当たりにある別れ道になるまで
ずっと目の前にいる。
相手がオレに気づくことは多分ない。
だってずっと後ろにいるから。
途中で振り向いてくれへんかな、とか。
小さな期待を抱きつつ
見えなくなるまで
その姿を眺め続ける。
それが、今のオレの日課だ。