【BL】近くて遠い、遠くて近い。
大学生
講義
慣れない私服通学。
慣れない椅子と机。
慣れない景色。
慣れない距離感。
高校入学したての頃より
違和感が半端じゃない。
周りの人はやけにキラキラしてるし。
きっと私服やからなんやろけど。
一気に茶髪の人が増えて少しビビる。
「ヒイロ」
ヨタヨタと講義室を出る
未だ黒髪のオレを呼び止めたのは
ナオくんの親友、田口くんだった。
「た、田口くん…」
「…やっぱ慣れへんよな、大丈夫か」
「うん…毎回この人の多さヤバい…」
「確かに」
そういう田口くんも、
見た目は高校時代よりかなり垢抜けて
周りの人同様、キラキラしている。
(元が格好良いのに…こりゃモテるわ…)
「……どした?」
「あ、いや、はは」
「??」
田口くんがオレと同じ地元の大学を
受験していたというのは
合格発表の直後に知った。
山下が隣町の短大へ行ったこともあり、
正直、知り合いもいない中で
唯一友達がいることに心底安心していた。
ありがたい偶然だと、神様に感謝している。
本当は、ナオくんと一緒に
大学通いたかったけど…。
「次の授業、どれ?」
「あーーー…確か英語A」
「そか、なら2棟やな」
「うん、今日は全部一緒?」
「おん、せやで」
「よかった〜…」
「俺もよかったー」
「またまた…。
コミュ力あんのに、よう言うわ」
「ひど、ホンマに思うてんのに」
「ははww」
高校時代では、ナオくんのこと以外で
あまり深く絡むことがなかった田口くんも、
大学に入学してからは
頻繁に同じ授業を取り合って
徐々によく喋る仲になっていた。
隣で一緒に授業受けるまで知らなかったけど、
彼はとても聡明で頭の回転が早く
オレなんかよりもずっと偏差値が高い
ハイスペックなイケメンだった。
授業中は勉強の話以外
何も雑談をしてこないし、
ぶっちゃけ山下といた時よりも
すんなり頭に授業内容が入ってくる。
(大学の授業ついていけるか不安やったけど
思うてた以上にできそうやな…)
田口くんが隣にいると、
山下の時とは違う楽しさが芽生えた。
純粋に学ぶという楽しさ。
そう考えると、
周りの意識が高いキラキラした人達も
大きなスクリーンで
しっかり教えてくれている先生も、
今隣にいる田口くんも
全て揃ったこの大学というのは
かなり良い環境なのかもしれない。