【BL】近くて遠い、遠くて近い。
「おーい田口」
「へっ」
講義が終わり、昼休み。
田口くんはすぐに
他の友達から呼び止められた。
「飯行くで、こないだ言ってたとこ」
「あー…、いやでも俺断ってるはず…」
無表情の中に若干困惑した視線を
オレに向ける田口くん。
「あ…オレのことは気にせんと、食べといで」
すかさず笑みを見せると、
田口くんは申し訳なさそうに荷物をまとめた。
「悪い、お前もちゃんと飯食えよ」
「ん、わかったw またな」
「あとでな」
ここ最近、田口くんと二人でいることが増えて
それ以外はずっと一人で過ごしている。
特に友達もいない。
でも、それに困っているわけでもない。
もともと一人の方が気楽やったし。
孤独を感じることすら、勉強で忙しくて出来ない。
ナオくんと話すことも。
そう、ナオくんだって忙しい。
1週間前からメールの返事が返ってこなくなった。
重たいって思われたくないから
それ以上メールしていない。
遠距離なんて、
どの頻度で連絡取れば良いのかわからない。
…ナオくんが、今
何をして
誰と居て
どんなことを考えているのか
もう、何もわからない。
でもたかが1週間だからと
全ての不安をぬぐってきた。
田口くんと一緒に。
全てを知っている彼は
唯一の相談相手。
いつも、オレのことを励ましてくれていた。
そんな彼にも、
ナオくんからの連絡はない。
一人の大切な友情が心から消えていくのも
なかなか寂しいもので
オレと田口くんはそれを慰め合うように
いつも一緒に過ごしていた。
信じて待とう。
ナオくんが、またここへ帰ってくるのを。
その時は、うんと積もる話を聞かせてやるんや。
だから、たくさん資格の勉強して、
手に職つけて、稼ぎまくって
いつかナオくんが帰ってきたら
いつでも一緒に暮らせるように
もっと、身も心も、
男としても成長してやる。
オレにとって大学は
そのためだけのものだった。