彼はリケジョな私のお世話係
コンコン、

10時19分。私以外誰もいない第一研究室のドアがノックされた。

「はい、」

「おはようございます。私、九条製薬営業部の九条悠真と申します。第一研究室の方ですよね?」

「おはようございます九条さん。はじめまして、第一研究室所属の中川美月です」

ドアを開けるとそこには写真通りのイケメンさんが立っていた。ここまでイケメンなら普通の女性は見惚れるだろうなと思う。

身長は目算で180センチくらい。大学時代唯一の友人の言葉を借りるならば、甘い顔をしたお兄さんといった感じだろうか。ワイルドな感じではなく、包容力のありそうな感じ。優しい雰囲気だが一本芯が通っていそう。決して押しに弱いタイプではないと思う。


「出張の件は夏目さんから聞いています。早速ですが中川さん、案内をお願いしても?」

「勿論です。まず我々第一研究室は新薬の安全性を検証するのが主な役割です。何回も検証を重ね、副作用がどの程度のものか確認していきます。こちらは無菌室です。様々な用途で使いますが、今はそうですね…個人研究で使用している細胞なんかがあります。それからあれは…」

正直御曹司がこの視察で一体何を知りたいのかはわからないが、とりあえず一通り案内してみる。夏目室長はとりあえず適当に説明しておけば良いと、随分投げやりだった。
あんなに一人で応対させることを恐れていたのに、かなり適当だ。帰ってきたらなにかペナルティが必要かもしれない。

「―――…以上が大まかな説明となります。なにかご質問はありますか?」

「…とてもしょうもない質問かもしれませんが、あのドアの先は一体何が…?」

御曹司が指さしたのは、唯一案内していない奥の部屋。

「ああ、あそこはシャワールームです。ここで泊まり込みをする際に使用することが多いです」

「なるほど。研究員の方は忙しい場合は徹夜もなさりますからね。ちなみに中川さんはどれくらいの頻度でここに泊まり込みを?」
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