彼はリケジョな私のお世話係
…こまった。正直に言えばほぼ毎日だ。しかしこれは言って良いものなのだろうか?
たぶん普通の会社員なら残業のしすぎとかになるのでアウトだ。
だが九条製薬の研究室は半分研究員の趣味の場だ。殆どの人が仕事は定時で終わっている。徹夜の人も残業の人も個人研究を行っている場合がほとんど。そのため研究員は残業したと申告しない。趣味で残業代をもらうのは違うと、そこだけ変に真面目なのだ。

さあどうする中川美月。答え方次第では最悪個人研究が禁止されるかもしれない。

他の研究員はどれくらい泊まり込んでいるだろう。そこに合わせるべきだ。うちの研究員二人はまったく泊まり込みしない。夏目室長は最愛の奥さんがいるから絶対毎日帰る。浅見くんも彼女と半同棲状態らしく2,3ヵ月に1回くらいしかしない。
だがほかの研究室の研究員はもっと泊まり込んでいる。今までに数回夜中に研究室近くのコンビニ行ったら、2日連続で同じ人に会ったことがある。週に2回はまああり得るのだろう。…そういえば第二研究室の室長が3徹っていってた。週に3回くらいが無難かな。

「週に3回くらいです」

「週3?多くない?」


…ああ、ミスったみたい。驚いたのかさっきまで敬語だった九条課長がため口になってしまっている。泊まり込み週3は多いのか。

「研究室の仕事ってそんなに過酷なの?」

九条課長が心配そうに見つめてくる。人に無関心な私でも申し訳なくなるのでやめてください。残業なんてしてないんです。趣味をオールでしているだけなんです。

「いえ、あの、九条製薬の研究員はみんなこんな感じです。仕事じゃなくて個人研究をやっている人が殆どなので気にしなくて大丈夫ですよ」

こうなったらうちはみんなそうです理論で突っ切るしかない。これが普通だと押し切ってしまえ。

「…そうなんですね。わかりました。研究、頑張ってください。それでは失礼します」


みんなそうです理論が勝利したのか、九条課長は問い詰めることなく帰って行った。
よし、面倒なことは終わった。もう二度と会うこともないでしょう!

ちゃんとできたかと心配してメールしてきた夏目室長にもうまくいったと報告した。

さらば!九条財閥の御曹司様!
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