リベンジ学園
虎治と辰雄は野中守の遺体の横を通り過ぎ、さらに廊下の奥の方へと歩いていった。



虎治は近くに紗栄子がいるはずの廊下を悠々と歩き、辰雄は怯えながらじっと耳を澄まし、虎治の背中を追っていた。



そして教室の脇を通る度に、辰雄はその教室に紗栄子がいないかを身構えて確めていた。



突然に紗栄子が現れるのを警戒しながら……。



そんな緊迫した空気が張り詰めている中で、虎治は辰雄にいつも通りに話しかけた。



「紗栄子が見つからねぇな。

どっかに隠れてやがるのか?」



「そんなわけないよ。

紗栄子はオレたち全員を殺すつもりなんだから」



「紗栄子のくせにオレを殺そうなんて生意気だぜ。

山岳部の部室で泣きわめいていたくせしてよ」



辰雄は虎治の話を聞きながら、この人には罪悪感というものが圧倒的に欠けていると思った。



虎治は今までケンカに負けたことが一度もない。



だからこそ、他人に媚びず、自分がまるで世界の中心であるかのように振る舞えてきたのかもしれなかった。



そんな虎治だからこそ、紗栄子の憎しみを他のクラスメイトの何倍も受けていた。



だとしたら、紗栄子はどれほど残酷に虎治を殺すつもりだろう?



辰雄がそんなことを考えているとき、窓ガラス越しに人影がチラリと見えた。



辰雄がその人影にドキリとして身構えたとき、窓ガラス越しに紗栄子の鬼の形相が顔がハッキリと見えた。



辰雄がそのことを声に出そうとしたとき、突然、窓ガラスが割れて、そこから制裁の槍の刃先が飛び出してきた。



そしてその槍の刃先はとっさに体を後ろに倒した辰雄の鼻先をかすめるように、真っ直ぐに突き出ていた。



虎治はようやく現れた紗栄子を見てニヤリと笑い、辰雄は驚きと恐怖で廊下に倒れ込み、無意識のうちに足がカタカタ震えて立ち上がることができなかった。



教室の中から虎治をにらんだ紗栄子は制裁の槍を片手に持ち、教室のドアへとゆっくりと歩いていた。



そして教室のドアが開き、憎しみに満ちた目をした紗栄子が虎治たちがいる廊下へと現れた。



辰雄はそんな紗栄子を見て、出会ってはいけない相手に出会ってしまった恐怖で、息が苦しくなっていた。
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