リベンジ学園
辰雄は震える足に力を込めて立ち上がった。



そこにはさっきまで空気のような存在になって、この場をやり過ごしたいと願っていた矢吹辰雄はもういなかった。



自分のこの手で紗栄子を殺す。



この金属バッドを紗栄子の頭に振り下ろして……。



(なぁ、誠二。

ケンカが弱い不良ってどう思う?)



辰雄の頭の中に立花誠二との会話が蘇った。



(本当はオレもさ、虎治君みたいにケンカで最強になりたかった。

でも、どんなに背伸びしてみても虎治君には勝てねぇよな。

虎治君はバケモノだから……)



辰雄は最強をあきらめながらも、ずっと最強という言葉に憧れていた。



もしも自分が原島虎治になれたなら……。



そんなあり得ないことを誰にも言わずに夢見ていた。



そして辰雄が胸の内に隠していた思いが今、心の中で爆発して、辰雄はバッドを振りかざし、紗栄子の方へと走っていた。



このバッドの一撃が紗栄子の頭に直撃したら、自分はこの西条学園中学の英雄になれる。



そんなことを思いながら……。
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