リベンジ学園
(やっぱりリベンジゲームの勝利者はこの私ね。

ゲームが始まる前からわかっていた。

小原紗栄子は私のことを殺せないって)



晴江は勝ち誇った表情で開かれている西門に目を向けた。



あの門から学園の外に出れば、その瞬間に自分の勝利が確定する。



思い返せば、西門を開けるスイッチを押したのも自分だし、西門を守る番犬ルドルフを倒したのも自分だ。



リベンジゲームは自分の能力を周りの人間に知らしめるためにあったと晴江は思いながら、西門の方へとゆっくりと歩き出した。



「どうして?

どうしてあんなことをしたの?」



背後から聞こえてきた今にも泣き出しそうな声に晴江はゆっくりと振り返った。



すると、晴江の背後で菜々美がシャイニングサーベルを握りしめながら、責めるような目で晴江を見ていた。



「早苗は晴江を信じていたんだよ。

晴江ならきっと自分たちを救ってくれるって……。

それなのにひどいよ……。

早苗にあんなことするなんて……」



菜々美は怒りで震える声で晴江を非難していた。



かつては仲間だったはずの晴江を菜々美は今、心から憎んでいた。



「菜々美は本気でそんなことを言っているの?」



晴江が菜々美に予想もしていなかった言葉を返してきて、菜々美はその言葉に戸惑っていた。



「一人の命を犠牲にして、たくさんの命が助かることは合理的で間違っていない判断よ。

菜々美はこの学園から誰も出られずに、学園内で全員が死ぬのが望みだったのかしら?

もしそうじゃないなら、私と一緒に門を出なさい。

菜々美も私と同じ勝利者にしてあげるから」



目の前にいる細身で背の高い美少女は、人間の顔をした悪魔だと菜々美は思った。



もしも村上晴江がいなかったなら、西条学園中学、3年2組の生徒は誰一人として死ななかった。



紗栄子も早苗も他のクラスメイトたちも……。



菜々美の中でふくらみ始めた晴江を拒絶する気持ちが、菜々美の足を前へと進ませなかった。



晴江はそんな菜々美を見て、菜々美をバカにしたように笑いながらこう言った。



「私と門を出るのが嫌なら一生そこに立っていればいいわ。

私、菜々美が凡人で生まれつきの敗者なのを忘れてた。

私にはもうあなたに話しかけることは何もないわ」



晴江はそう言って菜々美に背を向けて歩き出した。



それを見た菜々美は晴江の背中に叫んでいた。



「晴江、あなたはクラスの女王気取りで、自分が特別だと思っているけど、いつの日か必ずしっぺ返しを受けるよ。

晴江は気づいてないかもしれない。

でも私は、晴江にたくさんの憎しみが集まっているのを知っているの。

その憎しみを晴江はいつまでも無視できない。

だから晴江は……」



菜々美の話がそこで途切れ、その代わりに菜々美のうめき声が微かに聞こえていた。



晴江はそのことに気づくと、西門を目指していた足を止めた。
< 232 / 264 >

この作品をシェア

pagetop