リベンジ学園
『先生、違うんです。

私が受けているいじめは、自分で解決なんてできないんです。

私には何もすることが……、できないんです……』



加藤はそう言って、泣き出してしまった紗栄子を見て、厄介事が大きくなってしまうことを恐れた。



優秀な学生はネット上に無数にある動画学習で自習をする今の世の中で、教師の存在価値は昔ほどはないと言われていた。



自分は平凡な市民だと認めていた加藤は働かずとも生きていける豊かさの中で、教師という職業にプライドを持てなかった。



加藤は紗栄子のいじめ問題を先延ばしするために、紗栄子に優しく微笑みかけ、紗栄子との会話をそれとなく終わらせた。



「紗栄子のいじめ問題を僕も一度、考えてみるよ。

だから紗栄子、もしも自分で解決できることが何かあるなら、紗栄子はそれをするべきだ。

わかるよね、紗栄子」



加藤はそう言うと、紗栄子の言葉を待たずに、紗栄子に背を向け歩き出した。



紗栄子がいじめられて苦しんでいても、自分は少しも苦しくない。



加藤はそんな自分の哲学の中で、紗栄子を助けないという判断を下していた。
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