咎人と黒猫へ捧ぐバラード
真吏と有道と秀道が拉致されている、ヒューマノイド修理工場を青年が歩いていた。
その後ろには警備ヒューマノイドが何体か倒れている。
警備ヒューマノイドは人間の五倍のパワーがあり探知センサーなども当然ながら、ある。
しかし青年の前ではセキュリティなど、無いも同然だ。

彼の手がヒューマノイドに触れる度に動きが泊まり、倒れていく。

更に一体、倒し進もうとした所で、青年の足が止まる。
声が聞こえたからだ。
赤ん坊のような小さな鳴き声だ。
彼は見渡し場所を特定する。
どうやら部品棚の隙間にいるらしい。

青年の手が入らない小さな隙間に、子猫を見つけた。
全身が黒い黒猫だった。
大きさからして生後一、二ヶ月くらいだろうか。
青年の(てのひら)位の大きさだ。

隠れて親猫を呼んでいたのに現れた異端者に、毛を逆立てて威嚇している。
その必死な姿は可愛らしく、アキラルは僅かに瞳を緩ませた。

どこからか工場内に侵入してしまい、警備ヒューマノイドから隠れていたのだろう。
青年が厄介者を無くしてくれたと思ったのかもしれない。
何故ならば彼がその場から去ろうとすると、子猫は後を追いかけてくるのだ。
それに気付き、振り替える。
だが黒猫は警戒し姿を隠す。


「……」


もう一度、肩越しにそれを見やると、いない。
それ以上は振り返らずに奧へ進んだ。





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