咎人と黒猫へ捧ぐバラード
同性
外は雨だ。
「あ。そういえば」
傘はあの喫茶店に忘れてしまっている。
「コンビニで買うか」
ため息をついた時。
「真吏」
ひとりの若い女性が立っている。
傘をさして、腕に傘をぶら下げている。
「清白|」
ヒューマノイド、清白だった。
「マスターに頼まれました。真吏が傘を忘れたので、届けるようにと」
差し出された傘を真吏は受けとる。
「ありがとう」
今日は定休日で喫茶店は休みだ
せっかくの休日に申し訳ないと思いつつも、心が和んだ。
「夕飯を食べに来ませんか」
夕食は鷹人が作っているという。
「高竹!その美人、誰だよ?友達か」
編集部の男社員が目敏く声をかけてきた。
「うん。大事な友達」
真吏が返すと近づいてきた。
真吏とは同期の、長身でなかなかの美形男子である。
実際に彼はモテ男で女子の間で奪い合いと駆け引きが、火花を散らしているのだ。
真吏とは気が合うのだが、その争奪戦には参加していない。
彼とは同期であり仕事仲間、それ以上はありえないのであった。
その彼が清白をヒューマノイドとは気づいたのかは不明である。
「すげえ美人。合コンしようぜ」
「嫌よ。また逆恨みされるもの」
案の定それを見ていた女子社員は顔を寄せ、ひそひそ話をしている。
彼女らは今から彼と呑みに行く予定ではあるのだが、別の女と話していることは穏やかではないのだろう。
「怖い。感じ悪い」
「いいわねえ美人は。お誘いがあって、ちやほやされて」
「……ここまで聞こえたら、ひそひそ話じゃない」
清白から受け取った傘をさす。
「ほら、行った行った。それに合コンは年上じゃないから、嫌」
「わかった。また今度な。女って怖ぇ」
手を振り戻っていく。
「ごめんね。見た目も性格もチャラ男なんだけど、悪い男ではないのよ。赦してあげて」
一方、清白はまじまじと真吏を見つめる。
「真吏。私は友達なのですか?」
「……違うの?」
真吏が悲しげな顔をする。
「そっかあ。私はまだ友達未満ってこと。ごめんね、決めつけて」
「そうではありません」
清白が不思議そうにしている。
「私は人間ではありません。人工体です。友達とは同等の生命体に称する、名称ではないのですか」
清白は人類が産み出した高等生命体である。
人間よりも体力はもちろん能力も凌駕しているはずなのに、なぜかそういう所は鈍感だ。
「こんな風に意志疎通できているし、属性なんて関係ないの。鷹人君だって、あの黒猫は友達だし家族でしょう?」
清白は心底、納得したように頷いた。
「ネマと同じということですね。理解できます」
「うーん。そうじゃないんだけど」
真吏は額に指を当てて悩んだ。
そうではないのだが、完全に違うとも云いきれない気がする。
友達であり、特別な存在なことだけは確かだ。
ふと歩道の向こうに目を向けた真吏は一人の人物に気づいた。
真吏の三倍、肉付きの良い女性である。
「華先生」
真吏が云うとその女性は足を止め、背の高い二人の美形を見上げる。
「あ。そういえば」
傘はあの喫茶店に忘れてしまっている。
「コンビニで買うか」
ため息をついた時。
「真吏」
ひとりの若い女性が立っている。
傘をさして、腕に傘をぶら下げている。
「清白|」
ヒューマノイド、清白だった。
「マスターに頼まれました。真吏が傘を忘れたので、届けるようにと」
差し出された傘を真吏は受けとる。
「ありがとう」
今日は定休日で喫茶店は休みだ
せっかくの休日に申し訳ないと思いつつも、心が和んだ。
「夕飯を食べに来ませんか」
夕食は鷹人が作っているという。
「高竹!その美人、誰だよ?友達か」
編集部の男社員が目敏く声をかけてきた。
「うん。大事な友達」
真吏が返すと近づいてきた。
真吏とは同期の、長身でなかなかの美形男子である。
実際に彼はモテ男で女子の間で奪い合いと駆け引きが、火花を散らしているのだ。
真吏とは気が合うのだが、その争奪戦には参加していない。
彼とは同期であり仕事仲間、それ以上はありえないのであった。
その彼が清白をヒューマノイドとは気づいたのかは不明である。
「すげえ美人。合コンしようぜ」
「嫌よ。また逆恨みされるもの」
案の定それを見ていた女子社員は顔を寄せ、ひそひそ話をしている。
彼女らは今から彼と呑みに行く予定ではあるのだが、別の女と話していることは穏やかではないのだろう。
「怖い。感じ悪い」
「いいわねえ美人は。お誘いがあって、ちやほやされて」
「……ここまで聞こえたら、ひそひそ話じゃない」
清白から受け取った傘をさす。
「ほら、行った行った。それに合コンは年上じゃないから、嫌」
「わかった。また今度な。女って怖ぇ」
手を振り戻っていく。
「ごめんね。見た目も性格もチャラ男なんだけど、悪い男ではないのよ。赦してあげて」
一方、清白はまじまじと真吏を見つめる。
「真吏。私は友達なのですか?」
「……違うの?」
真吏が悲しげな顔をする。
「そっかあ。私はまだ友達未満ってこと。ごめんね、決めつけて」
「そうではありません」
清白が不思議そうにしている。
「私は人間ではありません。人工体です。友達とは同等の生命体に称する、名称ではないのですか」
清白は人類が産み出した高等生命体である。
人間よりも体力はもちろん能力も凌駕しているはずなのに、なぜかそういう所は鈍感だ。
「こんな風に意志疎通できているし、属性なんて関係ないの。鷹人君だって、あの黒猫は友達だし家族でしょう?」
清白は心底、納得したように頷いた。
「ネマと同じということですね。理解できます」
「うーん。そうじゃないんだけど」
真吏は額に指を当てて悩んだ。
そうではないのだが、完全に違うとも云いきれない気がする。
友達であり、特別な存在なことだけは確かだ。
ふと歩道の向こうに目を向けた真吏は一人の人物に気づいた。
真吏の三倍、肉付きの良い女性である。
「華先生」
真吏が云うとその女性は足を止め、背の高い二人の美形を見上げる。