咎人と黒猫へ捧ぐバラード
志鳥家の二階にある鷹人の部屋である。

「鷹人。いつまで真吏を待たせるつもりですか」

ベッドで寝転び猫雑誌を読んでいた鷹人は、雑誌をずらして顔を向けた。
腹には黒猫ネマが乗っている。
彼の後からできた姉清白(スズシロ)が、ベッドサイドに正座していた。

「あなたが意気地なしのせいで、真吏は踏み出せないではありませんか」

鷹人は上体を起こすと、ネマは眠ったまま喉を鳴らした。

「真吏は自分からは云いません。あなた以上に臆病なのです」

上体を起こした鷹人は清白(スズシロ)を見る。

「あのな」
「真吏は待っています。あなたも真吏が、気に入っているのでしょう?」

渕脇忠行と真吏が食事の約束をしていることを、鷹人は知った。

「いいことだ」

鷹人は云った。

「高竹真吏は渕脇忠行が好きなんだろう?おれには関係ない」

黒猫ネマに視線を落とし、頭を撫でた。
ゴロゴロと更に大きく喉を鳴らし幸せそうに瞳を閉じている。

「ミスター渕脇は真吏の理想のアイドルです。一緒に暮らし、供にする相手ではないのです」

鷹人は上の内容を話した。

清白(スズシロ)が、そんなことを?」

ヒューマノイドは人工生命体だ。
しかも自分の命を奪うように命令されていたのに、失敗して破壊され生まれ変わった。
人工生命体だから人間だからとか、そんな壁は、もうないのだ。

「ああ。だから、あのときに伝えようと思っていた」
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