愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「俺には無理だなぁ…」
私の話を聞いて、ふとそう呟いた瀬野。
意外だった。
彼なら一人暮らしもできそうだというのに。
完璧人間に見えて実は家事など苦手なのだろうか。
「瀬野くんならすぐ慣れるよ!」
「そう見える?」
「もちろん!」
自信を持って答える。
こればかりは本心である。
一人暮らしなんて慣れれば誰でもできるはずだ。
「あっ、もうすぐ家だよ」
歩き始めて10分ほど経ち、ようやく私の家があるアパートに着いた。
まだアパートが建って間もない、新しいところだったため、外見は白くて綺麗である。
「ここが川上さんの家…?」
「そうだよ、三階に私の部屋があるんだ」
エレベーターなどはないため、階段を使って三階へと目指す。
誰かを家に呼ぶだなんて初めてな上に、その相手が男というのも驚きだ。