愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜




まあ人気者の瀬野のことだ、手を出したりはしないだろう。

彼女がいるという噂を耳にしたことはないが、もしかしたらいるかもしれない。


「すごく今更だけどさ」
「……うん?何?」

「川上さんって彼氏いる?」


丁度私もそれと同じ趣旨のことを考えていたため、どきりとした。


「いや、いないよ」

こう答えると大抵の人には驚かれる。
長年付き合っている彼氏がいそうだとか、勝手に思われているのだ。


けれど事実である。
誰かと付き合いたいなんて思ったことがない。

告白はされても断っているし、恋人のようなことも一切経験したことがない。


それなのに今、瀬野を家に呼ぶだなんて少々警戒しなさすぎただろうか。

< 11 / 600 >

この作品をシェア

pagetop