愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
ここにきてようやく寝る体勢に入ったけれど、それだけで本当に疲れてしまう。
そういえば前回は瀬野に抱きしめられながら寝たっけ。
抱き枕のように扱われたはずだ。
けれど今回は触れるのを禁止しているため、そうなることはないだろう。
「…………」
それでも背後に感じる影。
恐らく瀬野は私の方に顔を向けて横になっているのだろう、先程から視線を感じるのだ。
最初は無視を決めて目をギュッと閉じるけれど。
一人用のベッドにふたりで寝るのは狭いし、何より布団に収まりきらない体は少し冷えて寒くなってきた。
この間、寒くなかった理由はふたり密着状態だったからなのか。
「川上さん」
「……なに」
「布団、わざと俺に多く渡さなくていいよ」
「…っ」
どうやら瀬野は気づいていたらしい。
けれどわざわざ口にして欲しくなかった。
私が瀬野を気遣っていることがバレるではないか。
「瀬野の方が大きいんだからそうして当たり前でしょ」
「絶対に布団被れてないよね」
「別に、着込んでるから大丈夫」
本当は嘘。
いつも通りの格好であるため、少し寒い。
それに今回は初めからベッドで寝るものだと思っていたため、前回取り出しても使わなかった夏用の布団を取り出さなかったことが悔やまれる。
薄くても少しは変わっただろう。
今からでも取り出そうか。