愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「……寝るの?」
「当たり前でしょ、もう日付変わってるんだし」
「えー、悲しい…この間も寝るの早かったよね」
「瀬野も早く寝るべきなんじゃない?」
いくら睡眠が浅いとはいえ、ろくに睡眠時間を確保できていないことだろう。
少しの気遣いである。
「そっかぁ…じゃあ俺も寝よう」
「ちょ、力強めないでよ」
抱きしめる力を強めてきた瀬野に少し抵抗の意思をみせるけれど。
彼はそのまま力を緩めようとはしない。
別に苦しいとまではいかないため、大人しくすることにした。
ここで暴れたところで時間が過ぎていくだけだ。
「おやすみ、川上さん」
「……寝込み襲うとかやめてよね」
「家に泊まらせてもらうのに、さすがにそんな最低なことはしないよ」
瀬野ならしそうだと思うのは仕方のないことだ。
何せ女扱いに慣れているのだから。
それでも今は瀬野の言葉を信じ、眠りにつくことにした。