愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
警戒するため背中を向けていたけれど、瀬野が寝ている限り手を出されることはない。
瀬野が寝ている様子もなんとなく見ようと思い、顔を上げると───
「……うわぁ」
寝顔までもかっこいい瀬野は、本当にズルい生き物だ。
綺麗で整った顔立ちが視界に映る。
この顔でさらに表向きの性格は良いのだがら、人気者で当然だ。
それに女の人たちも…瀬野に抱かれて嬉しいことだろう。
けれど中身はちゃんと見ていない気がする。
それがわかっていても、瀬野は家に泊まらせてもらうことを選ぶのだ。
一体どんな過去が瀬野にあったのだろう。
ここまで来ると気になってしまって当然だ。
一瞬、瀬野を突っついてやろうと思ったが、起こしてはダメだと思い我慢する。
「今日からどうしよう…」
勢いで家に泊めると言ったのはいいものの、予定など一切立てていない。
冬休みを誰かと過ごすこと自体が予想外である。
とりあえず服などは、早いうちに自分の家へ取りに行ってもらおう。
じゃないと瀬野の着る服がなくて───
「……ん」
その時、瀬野がピクリと動いた。
私はなぜか咄嗟に目を閉じて、寝たフリをしてしまう。