愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



不良の溜まり場に行くということで、女らしく見えるよう、ニットにロングスカートというコーデにした。


これで怖がってるフリをして“瀬野に守られている女”を演じれば、周りを油断させることができるだろう。


「私服だとさらに大人びて見えるね」
「…あっ、洗い物終わった?ありがとう」


瀬野が部屋に戻ってきたため、お礼を言ったけれど、なぜか驚いた顔をされる。


「……何?」
「いや、お礼を言うのは俺の方なのになって」

「は?やってもらってるんだからお礼言って当然でしょ、瀬野って常識があるのかないのかわからないね」


訳の分からない瀬野の言葉に呆れつつ、互いに準備ができたため立ち上がる。


「じゃあ行くよ…って、瀬野?
何そんなに笑ってるの、気持ち悪い」

「ううん、なんでもない」


どうしてか頬を緩めている瀬野を不気味に思いつつ、私たちは家を後にした。

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