愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







前回はバイクだったけれど、今回は電車で瀬野の家に向かった。

今日も瀬野の両親は家にいなかったようで、また彼は少し安心した様子だった。


それから瀬野は私服に着替え、その他の服や日用品を一つにまとめている間、私はリビングのソファに座って待っていた。


「ごめん、お待たせ。
じゃあ行こっか」

「行くって、瀬野の言うアジトってところに?」
「単なる溜まり場だって思ってくれたらいいから」

「その溜まり場が怖いっての。
相手は不良たちでしょ?私が狙われたらどうするの」

「大丈夫、人のモノをとるような悪い奴らじゃないよ」


さらっと言ってのけた瀬野だったが、“人のモノ”という言葉に引っ掛かった。

つまり私は“瀬野のモノ”ということだろうか。
だとしたらふざけるな。


「私がいつ瀬野のモノになったの?」
「んー、いつの間にか?」

「バカじゃないの、誰が瀬野のモノになるか」

「でも俺は川上さんを自分のモノにしたいって、思ったんだよね」


先を歩く瀬野が廊下で立ち止まり、振り返った。
その微笑みがあまりにも綺麗で思わずゾクッとしてしまう。


「な、なに…」


一歩後ろに下がると、瀬野がふっと息を吐くようにして笑う。

それもまた怖い。

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