愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「都合の良い解釈しないで…」
「でも川上さん、嫌がってるように見えないよ。
顔赤くしちゃって」
「…っ、るさい」
私の家では大人しかった瀬野が、牙を剥き始める。
本当に油断していたらこうだ。
「ほら、良い子だから目閉じて?」
「絶対にいや…」
目を閉じれば何をされるかなんて、考えなくてもわかる。
「川上さんは無理矢理されたいタイプなんだ」
「ち、ちが…」
「ん、じゃあどうするべきか賢い川上さんならわかるよね」
余裕たっぷりの笑みを浮かべて、私を見下ろす瀬野が本当にむかつく。
けれどそれ以上に───
「……んっ」
ドキドキしてしまっている自分に腹が立つ。
こんなの私じゃない。
素直に目を閉じれば、優しく唇を重ね合わされる。
相手は尻軽男だというのに。
慣れている男に、こんな簡単にキスされてしまう自分がバカみたいだ。
「本当にかわいすぎるよ川上さんって」
「……嫌い」
嫌い、本当に大嫌い。
キスしてきた相手は嬉しそうに額をくっつけてくる。