愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「都合の良い解釈しないで…」

「でも川上さん、嫌がってるように見えないよ。
顔赤くしちゃって」

「…っ、るさい」


私の家では大人しかった瀬野が、牙を剥き始める。
本当に油断していたらこうだ。


「ほら、良い子だから目閉じて?」
「絶対にいや…」

目を閉じれば何をされるかなんて、考えなくてもわかる。



「川上さんは無理矢理されたいタイプなんだ」
「ち、ちが…」

「ん、じゃあどうするべきか賢い川上さんならわかるよね」


余裕たっぷりの笑みを浮かべて、私を見下ろす瀬野が本当にむかつく。

けれどそれ以上に───


「……んっ」


ドキドキしてしまっている自分に腹が立つ。
こんなの私じゃない。

素直に目を閉じれば、優しく唇を重ね合わされる。
相手は尻軽男だというのに。


慣れている男に、こんな簡単にキスされてしまう自分がバカみたいだ。



「本当にかわいすぎるよ川上さんって」
「……嫌い」


嫌い、本当に大嫌い。
キスしてきた相手は嬉しそうに額をくっつけてくる。

< 137 / 600 >

この作品をシェア

pagetop