愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜







昼間にしては薄暗い場所だった。

バイクを走らせること30分。
治安があまり良くない地域にやってきた。


昼間なのに人通りの少ない場所。

私もこの地域に良いイメージはなく、一度も来たことがなかった。


「結構遠いんだね」

「学校を特定されたら面倒だからね。それにここは人目のつかない場所だから、結構良いんだよ」


確かに昼間である今でも、ここまで人が少ないと不良たちは嬉しいだろう。


「それでも昔よりだいぶマシになったらしいよ、ここの治安も」

「へぇ、そうなんだ」


マシになったと言うけれど、私の目にはとても治安が悪いようにしか見えない。

それは地元が平和だからだろうか。



「あ、でもひとりで出歩いたらダメだよ?川上さん、この間みたいにすぐ目をつけられるだろうから」

「……知ってる」

「俺の仲間だったら大丈夫だけど、それ以外は本当に危険だからね」


それってつまり、私は瀬野から離れられないということだ。

今日はすぐに帰れるのだろうか。
あまり不良たちの溜まり場に長居したくないのが正直なところ。

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