愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「早く帰りたいんだけど」
「なるべく努力するよ。
でも…昨日は奇襲にあったからなぁ」
「なに、それについて話すの?」
「まぁそうだね。敵陣に襲われたわけだから」
それらを封じ込めるほど圧倒的な力を持つ瀬野が恐ろしい。
そんな瀬野に連れてこられたのは、廃れた工場のような場所で。
中は昼間だというのに真っ暗で不気味だ。
「ここ、嫌」
「そんなこと言わないで。
これは見せかけの場所だから」
「……見せかけ?」
「地下に繋がる階段がここにあるだけ。
地下通路を通って行くんだよ」
地下通路って…あまりいい気はしないけれど。
瀬野に手を握られながら階段をおり、地下通路へとやってきた。
「わっ、思ったより綺麗…」
その声が地下に響く。
もっと錆びた感じの、壁とかが剥げているイメージがあったけれど。
比較的そこは綺麗だった。
地面はタイル式になっており、都会の駅が連想される。
「俺たちの族は一番新しいからね、ここも意外と最近できたんだよ」
「へぇ、そうなんだ。
ここからも結構歩くんだね」
「何でも歴代の総長さんは、アジトを見つけられて敵に奇襲かけられるのが嫌だったらしいよ」
だからここまで徹底しているのか。
一つの建物に辿り着きそうなほど歩いている。