愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「昨日は大丈夫でしたか!?」
「うん、大丈夫だったよ」
一見怖そうに見えるのだが、瀬野の姿を見るなり少年のように目を輝かせはじめた。
彼を尊敬しているのが一目でわかった。
その時、金髪の男と目が合う。
それを合図として私は怖がるように、一歩後ろに下がって瀬野の袖を掴んだ。
「あの、総長…その女は?」
「ああ、昨日奇襲に巻き込んでしまった子なんだ。
この子に誰も触れないよう伝えてほしい」
「わかりました!」
ふたりは綺麗に敬礼して、大きな扉を開ける。
薄暗い地下通路よりも、扉の先は明るくて少し目を細めた。
「…っ」
静かな地下通路とは違い、中は騒がしく。
まるで瀬野を出迎えるように、数えきれない人たちが待ち構えていた。
けれど特攻服を着て髪色も派手だったふたりとは違い、中には真面目そうな人も多くいた。
服装もバラバラで、学ランやブレザーの人もいれば、私服の人もいるため、ぱっと見どのような集まりなのかわからない。
本当に自由なんだ、ここは。
「総長!大丈夫でしたか!?」
「涼介さんだ…!」
そしてやっぱり皆、目を輝かせて瀬野を見ている。
そんなにもこいつはすごい人間なのか。
なんて、感心している場合じゃない。
継続して怖がるフリをするため、先ほどよりも瀬野に密着する。