愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「まずは川上さんに飛びついてきた男が陽翔ね。
こう見えて副総長だよ」
「なっ…その紹介、ちょっとひどくねぇ?」
「女に目がないけど、仲間思いのいい奴だよ」
「だから俺の扱い!」
こんな人が副総長なのか…と思う私は、瀬野のせいで感覚が麻痺しているのだろうか。
それか瀬野が完璧すぎて、あまりすごく見えないだけかもしれない。
「確かに陽翔は女癖が悪すぎるぞ。
今までに何度騙されたんだ?」
「まだ5回だからセーフだろ!?」
ご、5回も騙されたのか…と思わず突っ込みそうになったけれどグッと我慢する。
それよりも、副総長に話しかけた男を見る。
メガネに制服をきちんと着こなしている黒髪の男は、明らかに生徒会長でもしてそうな真面目な男だった。
「彼は悠真。幹部のひとりで、いつも冷静に物事を分析できるんだ」
「瀬野には負けるけどな」
「そんなことないよ、いつも悠真には助けられてる」
瀬野の言葉に照れた様子の彼は、恥ずかしそうにメガネを軽く持ち上げる動作をした。